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はま寿司が店舗数1位に。売上高では依然あきんどスシローがトップ。
2015年度・回転寿司企業ランキング。(2016年6月作成)



■「回転寿司チェーンの1位はどこなのか?」・・・当サイト(フードビジネス総合研究所 )へのアクセスを見る限り、世間の興味は尽きないようである。

それを知っていないと、日常物凄く困るとか、さらには恥ずかしいといったことは、決してないはずである。しかしながら確かに、ある日ふと「そういえば、それってどうなっているのだろう?」と一旦気にしだすと、無性に知りたくなる事がある。「回転寿司チェーンの1位はどこなのか?」についても、きっとこうした類の話なのだと考えられる。

(12年度ランキング以来更新を怠っていましたが、昨今やや動きもありましたので、この度最新ランキングを掲載いたします。)



■まず最初に、以前にも書いたとおり、ひとくちに「1位はどこなのか?」・「ランキングはどうなっているのか?」といっても、例えばTV番組の人気メニューランキングのように、そう簡単に決められるものではない。

それは、売上高なのか、店舗数なのか。
さらには、売上高の場合は企業の売上高なのか、チェーンの店頭売上高なのか。
企業売上高の場合、単独決算での売上高なのか、海外子会社等の子会社売上高も含んだ連結での売上高なのか。
回転寿司チェーン以外にも事業を行っている場合(例えば、寿司商品の製造卸売等)、その売上高は含むのか等といった問題がある。

店舗数の場合も、売上高と同様、企業としての店舗数なのか、あるいはブランド単位なのか。
また、国内店舗を対象にするのか、海外も含むのか、海外店舗の場合、フランチャイズ店舗は含のか、非連結の子会社が運営する場合は含むのか、さらには、もしも回転寿司以外の店舗(持ち帰り寿司、あるいは他業種)があったら含むのかといった問題がある。

また、どちらの場合も、どの時点・期間を対象としたランキングなのか、という問題もある。

こうした諸々のことは全て、回転寿司チェーンランキングに限った話ではなく、コーヒーチェーンでも、CVS(コンビニエンスストア)等での小売業でも同様に起こる問題である。

つまり「ランキング」とは、「ちょっと、まとめてみた~♪」程度の軽いノリで作るなら、あるいは、宣伝広告目的で自社や提携会社を上位にし、特定のライバル会社は外すといった意図的・主観的なもの(弊社運営サイトが「存在しないことになっている」ランキングを見たことがあります)を作るなら別なのだろうが、公明正大・厳密かつ客観的なものはそんなに簡単にできるものではないし、作成にはある程度の知見と結構な労力を伴うのである。



■さて本題であるが、前々回(2010年度)、前回(12年度)作成時のランキングは下記のとおりであった。

【2010年度 回転寿司企業ランキング(2011年5月作成)】
http://www.fb-soken.com/page805-11-02.htm
(企業売上高。2010年4月~2011年3月までの各社本決算における売上高を対象、連結決算の場合は連結ベース。店舗数は一部海外店舗や派生ブランドも含む。)

この時は、「年度」のランキングとしては「かっぱ寿司」のカッパ・クリエイトホールディングス (商号は当時)が売上高・店舗数とも依然1位であったが、「2010年下半期」の「店頭売上高」でみた場合に「スシロー」が1位になり、それが大々的に報じられた。
そのため、世で「回転寿司1位はどこなのか?問題」が起こり、弊社は上記URLのコラムを書いた次第である。

なお同年度のランキングは企業売上高・店舗数とも2位が「スシロー」のあきんどスシロー、3位が「無添くら寿司」のくらコーポレーションとなっていた。
因みにカッパ・クリエイトHDは回転寿司事業以外に「デリカ事業」(旧称・ベンダー事業。コンビニエンスストア向け商品の製造販売等)を営んでおり、企業売上高には同部門の売上高も含まれている。これを除いた「回転寿司事業」の売上高でみた場合でも、10年度は同社(カッパ)がまだ1位であった。

年度の企業売上高ランキングであきんどスシローがカッパ・クリエイトHDを抜き業界1位となったのは、翌11年度の事であった(カッパはベンダー事業を合わせても2位)。
また、同年度は、急成長を始めたはま寿司の国内期末店舗数が元気寿司 のそれを上回った年度でもあった。

【2012年度 回転寿司企業ランキング(2013年12月作成)】
http://www.fb-soken.com/article_archives01.html
(ランキングの諸条件は上に同じ。)

この時は、ランキングを主眼というよりも、当時センセーショナルなニュースであった「カッパ・クリエイトと元気寿司が経営統合視野に提携」(13年11月)についてコラム化したのに併せ、ついでとして2年半ぶりにランキングを公開したものである。
ちなみに、米穀卸の神明(現・神明ホールディング)の両社株式取得により進められた提携については、奇しくも上記URL記事の最後にその可能性を言及していたとおり、その後「完全白紙化」されるに至る。

カッパ・クリエイトHDは14年12月にコロワイド の子会社となり(日本経済新聞社「日経MJ」の14年11月26日の報道によれば、同年8月にコロワイド側から提案したとされる)、元気寿司はそのまま神明のもとで経営改善を進めていくことになる(15年に持分法適用関連会社から連結子会社化)。

12年度のランキングは上記URLに記載のとおりで、この時点では「スシローは売上高では1位となるも、店舗数では未だカッパ・クリエイトが1位」という所がポイントである。3位は売上高・店舗数ともくらコーポレーションで、4位にはゼンショー グループのはま寿司が上位3社を急追している所であった(店舗数でははま寿司・元気寿司が同数で4位)。

なおスシローが店舗数でカッパを抜いたのは、13年10月の事であった。その翌月に、神明を軸としたカッパと元気の提携がなされ、上記コラムを作成した次第である。



■2015年度ランキングに入る前に、先の12年度ランキング作成後(2014年1月~)の、回転寿司大手チェーンをめぐる動きを簡単に整理すると以下のとおりである。

(14年1月)カッパ・クリエイトHDと元気寿司、経営統合に向けた提携の第一段階として、仕入機能を神明に移管(一部機能を集約)。
(14年2月)カッパ・クリエイトHDが「回転寿司事業売上高」でくらコーポレーションを下回る(14年2月期決算。くらは13年10月期決算。連結売上高では「ベンダー事業」を持つカッパがくらを50億超上回る)。
(14年4月)神明HDがカッパ・クリエイトHDの株式を追加取得、提携関係を一層強化(F.デリカ得得より議決権割合5.88%を譲受)。
(14年5月) 元気寿司・法師人社長のカッパ・クリエイトHDにおける役職が執行役員社長から取締役社長に。
(14年9月)はま寿司、海外1号店(中国・上海)。
(14年10月)コロワイドがカッパ・クリエイトHDの連結子会社化を発表。カッパは神明・元気との提携を解消。
(14年11月)神明HD・藤尾社長、元気寿司・法師人社長等6名がカッパの取締役を退任。
(14年12月)カッパ・クリエイトHDはコロワイドの連結子会社となる。
(14年12月)くらコーポレーション、海外2国目となる台湾に出店。
(15年1月)あきんどスシロー、東京・中目黒に「回らない寿司」の新業態「ツマミグイ」を出店。
(15年6月)神明HDが元気寿司を連結子会社化(TOB実施で持株比率が40%超す。実質支配力基準による子会社化)。
(15年6月)14年度ランキング確定・・・企業売上高でカッパ・クリエイトHDが4位に。2位はくらコーポレーション、3位がはま寿司。
(15年9月)カッパ・クリエイトHD、都市型新業態「鮨ノ場」展開開始。
(15年10月)カッパ・クリエイトHDがカッパ・クリエイトに商号変更。

なお、回転寿司業界ではないが、神明HDは16年1月、業績低迷するワタミと資本業務提携している。



■さて、2015年度(2015年4月~2016年3月の本決算を対象)の回転寿司企業・売上高ランキングは以下のとおり。依然「スシロー」が売上高トップである。なお全て(株)は省略している。ランキング設定条件は上に同じである。

【2015年度 回転寿司企業 売上高・店舗数ランキング】

◇まずは売上高から。

【1位】あきんどスシロー:136,200 百万円(15年9月期・連結)
【2位】くらコーポレーション:105,306 百万円(15年10月期・連結)
【3位】はま寿司:101,034 百万円(16年3月期)
【4位】カッパ・クリエイト:80,320 百万円(16年3月期・連結)
【5位】元気寿司:32,318 百万円(16年3月期・連結)

なおカッパ・クリエイトは「デリカ事業」を除く「回転寿司事業」のみだと69,397百万円である。

◇各社の期末店舗数ランキングは以下のとおり。

【1位】はま寿司:433店舗(16年3月末)
【2位】あきんどスシロー:415店舗(15年9月末)
【3位】くらコーポレーション:375店舗(15年10月末)
【4位】カッパ・クリエイト:346店舗(16年3月末)
【5位】元気寿司:280店舗(16年3月期末)
(注)店舗数ははま寿司は同社HPを閲覧・カウント、他4社は各社IR資料による。

なお、どの社も海外店舗(連結又は非連結子会社直営及びFC)を含むが、その数は元気寿司のみ桁違いに多く(147店舗)、その他4チェーンはいずれも10店舗以下である。元気寿司は15年度に国内店舗より海外店舗の方が数が多くなっており、19年3月末までに「国内200店舗・海外250店舗」を目標としている。



■店舗数について、弊社フードビジネス総合研究所では、上記の決算ベースの把握と並行して、回転寿司のほかFR(ファミリーレストラン)・居酒屋・喫茶等の国内主要外食チェーンについて、「ブランド別」に「毎年1月月初時点」の「国内」店舗数を継続的に調査している(レポート『日本の外食チェーン50』 に掲載。上の決算ベースのランキングと異なり時点が同一であり、かつ、ブランド別・国内店舗数。)

2016年1月(月初)時点での「回転寿司チェーン・ブランド別国内店舗数」としてみても、1位が「はま寿司」(421 店舗)、2位が「スシロー」(417 店舗)であり、1年前(2015年1月月初)から首位が入れ替わっている。

なお、「はま寿司」は16年4月、京都府への出店により他チェーンに先んじて「全国47都道府県に出店」を達成している。しかし、この事や上記「店舗数1位」について、ゼンショーグループから特に大々的なPRはなされていないようである。



2016年7月19日記す。written by フードビジネス総合研究所
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