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外食産業・フードビジネス 「ニュースの見方」

外食産業・フードビジネスに関する様々なニュース・できごとに対する、考察・私見。
・・・これらはあくまで、「ひとつの見解」に過ぎません。
 

【ご注意】

→2015年度「回転寿司売上ランキング」と関連コラムはこちら。


以下のコラムは2011年(平成23年)5月に執筆したものであり、
売上高順位等の情報も全て執筆時点でのものです。
(当時の状況についてご参考まで、ご覧ください。)



「スシローが、売上日本一に。」・・・回転寿司・売上一位はどこなのか!?をスッキリ解決!
  (2011年5月30日記す。)



■「スシロー」が、売上日本一に!

 最近、こうしたフレーズを頻繁に目にするようになった。(主に、TVのバラエティ番組であるが。)

 こうした番組が放映されると必ず、弊社サイトにも、

 「回転寿司売上一位」などのキーワード検索で入ってこられる方が、一気に増える。


 「回転寿司の売上一位はどこなのか?」

 世間一般からみると、これは非常に関心が高いことだということを、こうした事実が示している。

 思わず、ネットで検索してしまう方の心境としては、

 純粋に、「へぇ、スシローが一位だったんだ。」という人もいれば、

 「あれ?かっぱ寿司じゃなかったっけ?」という人もいるであろう。

 そこで、以下、「回転寿司・売上一位はどこなのか!?」の疑問を、スッキリ解決!


■結論から申し上げれば、

 「スシローが、回転寿司売上一位に!」は、正しいとも言えるし、一方で、正しくないとも言える。

 ゼンショーと日本マクドナルドHDの件でも書いた通り、

 「○○の日本一はどこなの?」という問いには、本来、そう簡単・単純に、答えは出せないものなのである。

 だから、現時点において、

 ある捉え方をすれば、回転寿司売上一位は「スシロー」だし、

 また別の捉え方をすれば、一位は依然「かっぱ寿司」なのである。



■ 「かっぱ寿司」のカッパ・クリエイト株式会社と、「スシロー」の株式会社あきんどスシローでは、

  「決算期」が異なる。

 両社が同じ決算期であれば、話はもっと単純明快なのだが、

 前者(カッパ)は2月決算で、後者(スシロー)は9月決算である。

 「スシローが売上日本一に!」と言われ始めて暫く経った、本コラム執筆時点(2011年5月末)での

 両社の直近決算における売上高は、

 あきんどスシロー(2010年9月期決算)は819億1,742万円(ちなみに店舗数は288)。

 カッパ・クリエイト(2011年2月期決算)は、連結922億5,790万円、単独で879億6,820億円(ちなみに店舗数は379)。

 このように、直近決算売上高をみれば明らかに、カッパがスシローを約100億円上回っており、

 カッパを単独ベースでみたとしても、約60億円の差でカッパが上回っている。

 (なお、カッパ・クリエイトは、コンビニエンスストア向け事業にも注力しており、

  同年度のCVS向け事業売上が49億となっている。)

 つまり、現時点での直近決算の売上高でみれば、スシローはまだ日本一ではないということである。



■しかしながら、

 「データソース」・「期間の設定の仕方」を変えてみると、

 「スシローが日本一に!」は、事実である。


 両社の月次売上は、「実額」で公表されている。

 (大多数の上場企業では、月次売上は前年対比のパーセントのみを公表し、金額は公表していない。

 しかし、居酒屋業界の一部の企業などでは金額も公表しており、

 面白いことに、くらコーポレーション、元気寿司をあわせた回転寿司大手4社は、全ての会社が

 金額も公表している。

 さらにいうと、あきんどスシローは、非上場となったにも関わらず、上場時と同様に、

 月次売上データを開示し続けているし、有価証券報告書も公開している。

 この辺りには、「非上場にしたけど、それは業績が悪化したからではないし、別に業績を隠す必要もないよ。」

 という、一種の「潔さ」というか、「自信の表れ」のようなものを感じる。)



■「かっぱ寿司」と「スシロー」の、月次売上データ(総売上高・実額)の動きを整理すると、以下の通りである。


 ・2010年5月までは、わずか1カ月(2009年6月)を除き常に、カッパの月次総売上高がスシローのそれを上回っていた。

 ・ところが、2010年6月には、かっぱが65億9百万円、スシローが65億85百万円と、
  スシローの月次売上高が、かっぱのそれを(僅差ながら)上回り、それ以降、
  7月及び8月は、かっぱが巻き返し、9月は再びスシローが、10月はかっぱが上回りと、
  状況は月ごとに目まぐるしく変わるようになる。

 ・そして11月になると、スシローの売上が再びかっぱを上回り、
  それ以降、本コラム執筆時点の直近データである2011年4月まで、6カ月連続して、
  スシローの売上がかっぱのそれを上回り続けている。

 ・さらにいえば、2010年下半期(両社それぞれの決算期に基づく「下半期」でななく、暦年ベースでの、
  7月から12月までの売上累計)でみると、かっぱが455億43百万円、スシローが462億5百万円と、
  スシローがかっぱを上回った。 (但し、1月〜12月の合計では、依然、かっぱの方が上である。)

  この時点から、このことをもって、「スシローが日本一に」の報道がされ始める。


■このように、

 最初にも書いた通り、 「スシローが、回転寿司売上一位に!」は、正しいとも言えるし、

 
一方では、正しくないとも言えるのである。

 (少なくとも、現時点では。)



■では、「今後」はどうなるのか?スシローが、決算期ベースでも、月次売上の暦年累計ベースでも、

 どちらでも一位になるのか?それとも、かっぱ寿司がこのあと巻き返すのか?

 ・・・安易な断定は避けたい。

 しかし、参考まで、

 以下のような試算をしてみた。
 

 これはあくまで、現時点で、ある仮定のもとに条件設定をして試算してみると、このような結果になった、
 というだけのことであり、
 必ずこうなると予測したわけではないので、結果の「独り歩き」がないよう十分ご注意いただきたい。

 両社の、直近8ヶ月の月次売上高(総売上高ベース)の対前年成長率を求めると、
 かっぱが6.9%、スシローが23.3%(!)となる。(なお、かっぱについては、震災の影響が特に甚大であった
 2010年3月を除いて算出した。除外しないと、3.6%となる。)

 今後も、この状態がこのまま続くとは何ら限らないことを承知で、この平均成長率を前年各月の数値に乗じていくと、
 2011年上半期(1月〜6月)の累計売上高は、スシローがカッパを上回る(これについては、ある程度確度が高いと
 考えられる)。
 さらに、2011年の暦年ベース通期(1月〜12月)の累計では、これもやはりスシローが上回る試算になる。

 決算期ベースではどうか。

 これについても上記条件設定での、あくまで仮定の話であるが、現状の成長率がそのまま保持されたとして、
 あきんどスシローの2011年9月期決算売上高は、回転寿司業界では初の1,000億超えを達成することになる。
 一方、カッパ・クリエイトの2012年2月期業績予想(4月20日発表)では、連結で972億〜987億・単独で850億
 〜865億とされている。

 (繰り返す通り、ある仮定でのざっくりとした「試算」であり、現状の新規出店ペースが維持され、かつ、
 既存店売上の伸びが維持された場合の、「仮定の話」であるため、何ら、断定をするものではありません。)

 いずれにしても、現状の伸びがこのまま変わらず維持されれば、近いうち、
  「スシローが日本一に」が、寸分の疑いもなく現実のものに、ということになる。


(2011年5月30日記す。)


written byフードビジネス総合研究所

 
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