2010年を振り返る・・・えっ!「すき家」が「マック」を抜いて日本一になったの??(2010年12月13日記す。)
■2009年末、松屋フーズが「松屋」における牛丼(並)の恒常値下げ(→320円に)を実施し、これに端を発する「牛丼戦争」が勃発。
その後、「すき家」のゼンショーも280円への恒常値下げを実施し、老舗・「吉野家」は380円を維持しつつ期間限定での値下げで対抗。
「すき家」「松屋」は度々「牛丼(並)250円」のキャンペーンを実施、既存店客数・売上(前年同月比)を大きく伸ばし、これが低調であった「吉野家」は「独り負け」等と散々書かれ・・・・
・・・・今年(2010年)は年間を通して、ゼンショーや吉野家が頻繁に、一般メディアでも話題にのぼった一年であった。
→【参考】「すき家」「吉野家」の月次既存店データ 外食大手月次売上速報
■この「牛丼戦争」が一層激化の様相をみせていた5月、ゼンショーの2010年3月期決算において、2011年度決算の通期売上見込み数値が発表された。
それが、戦略的店舗数削減と直営店FC化を進める日本マクドナルドHDの2010年12月決算予想におけるそれを上回るものであったことから、「ゼンショーの連結売上高が、日本マクドナルドHDのそれを逆転し、外食上場企業1位になる」見込みであることが判明。当サイト(外食上場企業ランキング2009)でも、その旨は報じた。
■しかしながらその後、この事実をもってして、まるで「すき家がマックを抜いて日本一の外食チェーンになる(なった)」的な(普通にみていると、そう受け取ってしまっておかしくないような)報道が、一部でなされていたのは、驚きであった。
■ゼンショーグループは、「すき家」を経営するゼンショー(単体)を核に、多数の子会社からなるグループ企業である。グループの中核的なブランドであるとはいえ、「すき家」そのものと、ゼンショーの連結業績を混同させ(その辺を、曖昧に、うまくぼやかして)、同一が如くに論じる報道は、一般消費者(視聴者・購読者)を誤解させないか。
■ゼンショーの連結売上(3,341億)のうち、ゼンショー単体(「すき家」)が占める割合は、3割強程度(これは「すき家」単体の店舗売上が殆どだが、10年3月期からは、吸収合併したラーメン業態の売上が含まれており、11年3月期からは同じく焼肉DRの売上が含まれることとなる)。その他6割弱は、「ココス」(ココスジャパン)、「なか卯」(なか卯)、「ジョリーパスタ」(サンデーサン)、「ビッグボーイ」(ビッグボーイジャパン)、「華屋与兵衛」(華屋与兵衛)等、連結子会社が運営するチェーンの売上で構成されている(2010年3月期実績)。
■ゼンショーグループの連結売上高が外食上場企業ナンバーワンになったとしても、「すき家」の店舗売上高は、(店舗数を大幅に減らしている現状にあってなお)「マクドナルド」の店舗数・店舗売上高の、半分にも満たない。(それぞれの2010年度決算時点の店舗数は、「すき家」が1,405店舗に対し、「マクドナルド」は3,715店舗。前者が積極的に店舗数を増やし、後者が戦略的閉鎖を進めていても、まだこれだけの差がある。)
現状での「すき家」の店舗数・店舗売上は、店舗数が1,300台で売上(直営+FCの店舗売上高)が1,000億程度の「モスバーガー」とちょうど同水準程度の規模になっている、といったところであろう。このことは、れっきとした客観的事実である。(勿論、ゼンショーグループおよび「すき家」の勢いは、認めるところであり、このことに何ら疑いの余地はないが。)
(・・・では今後、本当に「すき家」の店舗数・売上高が、「マクドナルド」を抜いて日本一になる日は来るのか?
〜現状で何ら断言はできないが、そのためには、現状の「すき家」の郊外型及び路面型を中心とした立地タイプに加え、かつてマックが進めていた、商業施設やフードコート内等の「小型店舗・サテライト店舗」をより積極的に拡大していかないことには、「すき家がマックを抜いて日本一」は、そう簡単ではないと考えられる。
もっとも この辺は当然、こんな所で私が言わなくとも、ゼンショー・小川賢太郎会長兼社長以下経営陣は考えているであろうが。
また一方で、マクドナルド側から考えてみると、米国のマクドナルドが、日本における「マクドナルド」あるいは日本法人自体の、日本国内における「地位」にどれだけ固執しているのか?(=日本法人から、ロイヤリティがより多く、確実に入ってくるのであれば良いのであって、その日本国内における「地位」というのは、必ずしも第一義的な経営目標ではないのでは?)と考えることもできる。)
■なお、何がどうなっているのか、ゼンショーの10年3月期決算が出た時点(同年5月)で、なぜか、ゼンショー連結売上が日本マクドナルドHDのそれを上回り、外食上場企業1位に「なった」と報じた経済誌があった。
そこには、ランキングとコメントで、そのようにはっきり明記されていた。(なお、このゼンショーの件のほかにも、いくつかの「謎」を含んだランキングであった。)
一体、何のソースをもってきて、どんな条件設定をするとこうした結果になるのか、全く不明であるが、ネームバリュー絶大なメディア・経済誌がこう報じれば、それをみた99.9%の人は、そのまま鵜呑みにする。
■「商業記事」は、「読まれてなんぼ・売れてなんぼ」であり、「わかりやすさ」が第一で、そこでは「センセーショナル性」が重要で、より「ドラマチックに」報じなければならない。
一方、その読者も、難解な内容や、厳正なる事実を、そう求めてはいない。せいぜい、くるぶし辺りまでの蘊蓄(うんちく)や雑学として、職場や学校で語れる程度でオッケーなのだから(事実、私自身も、外食以外のあらゆるジャンルについて、メディアに求めている情報は、そういうものかも知れませんが・・・)。
2010年のできごとを振り返りつつ、同年12月13日記す。
written byフードビジネス総合研究所