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外食産業・フードビジネス 「ニュースの見方」

外食産業・フードビジネスに関する様々なニュース・できごとに対する、考察・私見。
・・・これらはあくまで、「ひとつの見解」に過ぎません。
 

王将快進撃!の見方(2)・・・「王将とバーミヤンは競合か!?」(2009年10月16日)


・餃子の王将(王将フードサービス)の快進撃については、一般世間にも広く
伝わっているところであり、各所で様々な分析がなされているようです。

・当サイトにおいても約1年前の昨年11月、次のようなコラムを掲載しました。
http://www.fb-soken.com/page805-08-04.htm
基本的なことはここに述べたとおりですが、今回、以下2点を追記したいと思い
ます。

■王将繁盛の理由は、「皿洗いで無料」ではない■

・王将が好調であるのは、王将自身の「内部要因」によるものが大きいのですが、
「外部環境」のうち、あるTV番組がそれを程度加速させたのは事実と思われます。
王将フードサービス自身も、そのことをある程度自覚していると思われ、その後も
メディアへの積極的露出を進めているようにみえます。

・その際、TV番組によって取り上げ方は違いがあるのですが、王将の「店舗・店長
の裁量」を面白おかしく取り上げ、「超盛りメニュー」や、「皿洗い1時間で食事が
タダ」といった特異な事例を、さも繁盛の秘訣のように取り上げているものがありま
すが、これは全く違うと思います。
「店ごとのびっくりメニューやサービスが、好調の秘訣ではない」ということです。

・確かに、「同じ商品・同じ価格・同じメニュー・同じサービス」という、画一的な
チェーン展開手法について、その一部または全部が見直される傾向は存在して
います。王将においても、セットメニュー等につき価格設定を含め、各店長の裁量
に任されているようですが、これは好調の副次的な要因ではあっても、主因では
ないと思います。

・昨年のコラムにも書いたように、王将の強みは、「あの価格で、店内調理のアツ
アツで美味しい商品が、気持ちのいい接客サービスの中でスピード・タイミング
よく出てくる」ことに他なりません。こうした言葉にしてみると、実にシンプルである
ことに改めて気付かされます。特に、王将が圧倒的強みを持ち、他社と圧倒的
な差別化を図っているのは、極めて単純ですが 「美味しい」ということに尽きます。
王将がチェーン店らしからぬのは、皿洗いで無料などの「びっくりサービス」では
なく、「商品・味」にあるということです。

・一般消費者は、QSCという言葉も知らないでしょうが、そんな分析はしなくても、
QSCが徹底された店舗を選んでいるにすぎないと言えるでしょう。

・言葉にすれば極めてシンプルなこれらのことを、ナショナルチェーンとして数百
店規模で実現していくことは、そう容易なことではないはずです。ただ、「王将が
好調」だからといって、その要因を見誤っていては、王将に打ち勝つどころか
追随していく事さえ困難となる企業がでてくるでしょう。

■王将とバーミヤンは競合か!?〜「料理ジャンル」と「利用動機」は全く別のもの!■

・また一部において、王将とバーミヤンをライバルとみなした分析・報道がなされ
ているのを散見します。
中には、「王将が売上を伸ばしているのは、バーミヤンや日高のお客が王将に
流れたに過ぎない」といったものまでありましたが、これは全く違うと断言します。
日高は競合でしょうが、バーミヤンは違うのです。

・「業種と業態」論で、既に語りつくされたように、業種と業態は違います。言い換
えれば、「料理ジャンル」と「顧客の利用動機」は、全く別のもの、ということです。

・消費者サイドからみた場合、まず「利用動機」があり、その中で、同じような利用
動機に対応する複数の店舗のなかから、ひとつの店舗を選択し利用します。

・王将を利用するのは、昼時であれば、駅やオフィスに近いなど立地的利便性の
高いことを前提に、早くて安くて、空腹が満たされて、それでやはり美味しい、と
いう動機の中で、そこには、中華というジャンルと全く関係なく、主な競合はFFの
牛丼や定食屋、ラーメン等、副次的には、FF洋風(ハンバーガー)や、居酒屋の
ランチ営業等のなかから、王将が選択される訳です。夜は、利用動機において、
ラーメン店・居酒屋等と競合するでしょう。

・一方、バーミヤンは、王将と同じ中華料理店であり、業種上は同じカテゴリです
が、業態としてはあくまでFR、しかも「狭義のFR」と考えられます。消費者の「利
用動機」としては全く異なるもので、競合は、立地にもよりますが多くの場合、
デニーズであったり、グラッチェガーデンズであったり、ジョリーパスタであったり
するでしょう。ロードサイド等のクルマ利用の利便性が高い立地で、家族や友人
等と、ゆったり落ち着いた雰囲気のなかで、「食べる」ことだけではない「食事後
の語らい」の時間を過ごすことも含めて、「利用動機」があるのです。





2009年10月16日記す。
written by・フードビジネス総合研究所
 
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