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外食産業・フードビジネス 「ニュースの見方」

外食産業・フードビジネスに関する様々なニュース・できごとに対する、考察・私見。
・・・これらはあくまで、「ひとつの見解」に過ぎません。
 

王将フード、逆風下の快走・・・・店舗数は、目的ではなく、結果。(2008年11月) 




■11月21日付の日経MJ・フードビジネス欄に、「王将フード、逆風下の快走」として、「餃子の王将」を展開する王将フードサービスの好調な業績や、その秘訣についての記事が掲載された。
既存店売上高が15ヵ月連続でプラス、連結業績は6期連続増収増益。同紙ではその秘訣として、「メニュー決定等で店舗に裁量権を持たせ、調理については中国人調理師が指導、店長に対する接客研修実施」を挙げている(詳細は、同日付の日経MJをご参照いただきたい)。

今回このように、たまたま王将についてのニュースがあったので、王将自体について、また、そこから派生して考えることを述べたい。

■私が日常で、最もよく利用する外食店舗は、実は「餃子の王将」(神奈川県内某店)である。
距離的・地理的な要因もなくはないが、外食大手の店舗が多数ひしめくエリアにあって、昼時、本当に食べたい物を食べたい、と思った時は、迷わず王将に行く。実際、この価格帯(王将の客単価は850円とされる)において、王将の「バリュー」(価格に対する商品価値)は、群を抜いている。
同じ価格帯・顧客利用動機にあたるであろう、日高やリンガーハット、さらにはバーミヤンなども、きっと、この辺は素直に認めざるをえないところであろう。

■なお、MJの記事でも指摘されていたように、王将スタイルでは、抜群のバリューを実現しうる反面、「店舗間での商品・サービスのばらつき」は、懸念されるところではある (MJでは、商品のばらつきがでる懸念について、同社では中国人調理師が指導にあたっているとの報道)。
実際、特にサービス面においては、店舗間のレベルの差は散見される。私が日ごろ利用している店舗が、店長以下、大変素晴らしい接客を実践しているから、他店で悪いところがあると、余計に目立つ。また、私は関東の人間で、王将歴は短い。関西出張時に、大阪駅近くの王将を利用したところ、その違いに少々戸惑った。これは、関西の人たちから言わせれば、真逆ということになるのだろうけど。

■上述のように、500店舗を超えるチェーンでありながら、チェーン店らしからぬ、店舗ごとの差異みたいなものが、チェーンストア理論には反しながらも、そこがまた微妙な「王将の魅力」を形成しているようである。
500 店舗といってもそれに達したのは昨年で、創業から実に40年(!)かかっている。
なおかつ、「また同じ年数をかけて、今度は1000店を目指す」、と同社社長が言っていた(と、どこかで読んだ)。

つまり、同社はまさに、王将というお店の経営に文字通り「邁進」してきたのであり、500店舗を達成したのは、その結果に過ぎない。
他方、FCシステムを武器に、他人資本で急激に、わずか数年で何百店の店舗拡大した新興企業の多くは、その後行き詰まり、方針の見直し・既存店の立て直しを迫られている。
王将も、実は3〜4割はFC店舗だが、こうしたFCとはその本質が違うと思われ、同社社長の「同じ年数かけて1000店舗」というのも、そうした含みが多分にあっての言葉なのではないか。
王将フードサービスの経営においては、店舗数は、目的ではなくて結果といえよう。


2008年11月21日記す。
(written by フードビジネス総合研究所

 
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