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外食産業・フードビジネス 「ニュースの見方」

外食産業・フードビジネスに関する様々なニュース・できごとに対する、考察・私見。
・・・これらはあくまで、「ひとつの見解」に過ぎません。
 

 2013年、外食業界最大の出来事は「カッパ・クリエイトHDと元気寿司が経営統合視野に提携」・・・回転寿司売上ランキング付き。(2013年12月26日記す。)



2013年の「外食業界トップニュース」はこれだったのではないか、と思っています。
あきんどスシローの躍進を横目に、劣勢に立たされていた両社(元気寿司については、
新ブランド「魚べい」に活路を見出し始めた所でしたが)。

11月の、「経営統合を視野に入れた業務提携」は、ご存知のとおり、米穀卸「神明」による
両社の株式所有・関連会社化によるものです。
(以下、カッパ・クリエイトHDを「カッパ」、元気寿司を「元気」と記す場合があります。)

ここに至るまでには、いくつかの段階を経ています。流れを簡単にみていきます。


■まず昨年(2012年)5月、神明は元気寿司と資本業務提携。元気の株式を取得
(議決権割合28.4%)、持分法適用関連会社とします。

元気寿司の株式は当時まで10数年、グルメ杵屋が一定割合を所有、同社の影響下にありました。
ところが近年、グルメ杵屋の業績も低迷し、自社ブランドの海外FC展開において
神明と出会ったのが発端で(グルメ杵屋IR説明会で筆者拝聴)、
元気寿司株式の譲渡話が進んだ模様です。

■次に、今年4月、カッパ・元気の提携を「予感させる出来事」が起こります。
神明は、今度はカッパ・クリエイトHDと資本業務提携。カッパの株式を3.93%と少数ながら取得、
両社(神明、カッパ)は相互に役員派遣をする、というリリースです。

この時点で、「神明が早晩、回転寿司業界の再編に向けカッパ株の追加取得に動くであろう」
ことは、ある程度予測されました。

■そして半年後、10月、カッパは「不採算店50店舗の閉鎖」を発表
(これにより、11月時点で店舗数においても「スシロー」が国内回転寿司1位となる)。

次いで同月末、神明はカッパの筆頭株主ジェム・エンタープライズから全株式取得、
カッパは神明の持分法適用関連会社となりました(26.49%)。
これにて神明は、回転寿司の2位企業(カッパ)・5位企業(元気)両社を関連会社としました。

■翌11月には、表題のとおりカッパと元気の「経営統合を視野に入れた業務提携」が発表され、
一般メディアも含め大々的に報道されました。

カッパの経営トップは刷新、創業家の徳山代表取締役は退任し、
代表取締役会長兼社長には神明の藤尾社長が、社長執行役員には元気寿司の法師人社長が、
それぞれ就任しました。


・・・なお、報道(『日経MJ』2013年12月8日フードビジネス欄)によれば、
あきんどスシローの13年度決算売上高は1,192億円(13年9月期)とのこと。

一方、カッパと元気の同年度期末予想売上高(カッパは14年2月期予想931億円、
元気は同3月期予想254.6億円)を単純に合算すると、
スシローとほぼ同規模の1,185億円ということとなります。

「店舗数」については、上述のとおりカッパは10月の大量閉鎖でスシローに抜かれましたが、
元気寿司の国内店舗も140近くあり、合わせればスシローを大きく上回ります。

今後「経営統合」となれば、スシローを脅かすライバル企業(グループ)となりえるでしょう。

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・・・さて、この「経営統合」、具体的にどのような形態となるのかは今後の協議とされていますが、
そこで重要なのは「どんな経営体になるのか」よりも、
「店舗ブランドの統廃合・再生をどう進めていくか」でしょう。

仕入・配送等の共同化のみ行い、既存のブランドを全て存続させて
「かっぱ寿司」及び「魚べい、元気寿司、すしおんど」がそれぞれ共存していく、ということでは、
統合の意味合い・効果は「限定的」なものとなるでしょう。

仕入等のスケールメリット追求は当然として、両社のこれら複数の店舗ブランドについて、
1ブランド(あるいは2ブランド)への「集約」による強化が必要でしょう。

「かっぱ寿司」と「魚べい」の業態・フォーマット(105円、高速レーン・・・)は、良く似ています。
歴史とネームバリューにおいては「かっぱ寿司」が抜きん出ている一方、
目新しさ・勢いにおいては「魚べい」が勝るようにも思えます。

・・・とにかく、「スシロー」に匹敵する・あるいは凌駕するような、
「一大店舗ブランド」が実現できないことには、統合の効果は「薄」です。
いっそ大胆に、例えば全店舗を「魚べい」(あるいは「新ブランド」)に統合・転換していくような、
大胆な取り組みが必要でしょう。
勿論、それは決して平易なことではないのでしょうけれど。

そして他方、統合に向けた動きが「進まない」(現状のまま、あるいは、後退)といった結果も、
十分に有り得ると思います
(思い起こせばかつて、ゼンショーがカッパ・クリエイトとあきんどスシロー両社の株式を取得、
07年に両社を持分法適用関連会社とするも、
その後いずれも提携解消・株式放出するに至っています)。

・・・来年も目が離せません。

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ご参考まで、「2012年度」の回転寿司企業・売上高ランキングは、以下のとおりです。
(2013年度ランキングは、14年5月以降に確定することとなります。)

【1位】あきんどスシロー 111,304百万円(12年9月期)、336店舗
【2位】カッパ・クリエイトHD 94,142百万円(13年2月期) 397店舗
【3位】くらコーポレーション 78,971百万円(12年10月期) 315店舗
【4位】はま寿司 44,615百万円(13年3月期) 230店舗
【5位】元気寿司 24,598百万円(13年3月期) 230店舗

(注)カッパ・クリエイトHD、元気寿司は連結決算。店舗数も決算期末時点。
あきんどスシロー、カッパ・クリエイトHD、くらコーポレーション、元気寿司は海外店舗あり
(くらコーポレーションの海外事業は上記決算までは非連結で、店舗数のみ含む。)






2013年のできごとを振り返りつつ、同年12月26日記す。
written byフードビジネス総合研究所

 
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